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『切腹(1962)』感想 一度見たら忘れられない、いつまでも腹の底に残り続ける傑作。 

切腹

全人類が一度は見るべき、素晴らしい映画。

作品が持つ張り詰めた緊張感に、見ていて息が出来なくなるほど。

最初から最後まで、一分の隙もない傑作です。

  

あらすじ

舞台は1630年、井伊家の江戸藩邸に1人の浪人が訪ねてくる。

津雲半四郎と名乗るその男は、改易された福島家の元家臣であり、生活も苦しく、潔く切腹したいので玄関先を貸してほしいと申し出る。

当時、巷では食い詰めた浪人たちが同様の手口で金を貰う、ゆすりが横行していた。

武士の風上にも置けぬその所業を苦々しく思っていた井伊家家老・斎藤勘解由は、

先日、半四郎と全く同じ話を持ち掛けてきた千々岩求女という浪人の話を語って聞かせる。

 

感想

名優・仲代達矢

めっちゃくちゃ格好良い。惚れ惚れする。

まず声が良い。深く、重い。人の耳を引っ張っていく力を持った声。

ほぼ会話劇で進むため、とても重要な要素なのだが、心地よい音でありながら緊張感が伝わる名演。

序盤と終盤、回想シーンと現在、見事な演じ分けにも圧倒される。

 

何と、驚くべきことに撮影当時29歳。

信じられない!

役者恐るべし…。

 

歴史に残る切腹シーン  

中盤にある切腹シーン。

これ程残虐な行為があるだろうか!

画面から痛みが伝わってくる迫力。 思わず眼をそむけたくなる 。

このシーンのためだけでも見る価値がある。

 

見事な脚本!

導入から引き込まれる。上質なミステリの様な脚本。

徐々に真相が語られていく構成で、物語の推進力が途切れない。

エピソードの一つ一つにも力があり、ダレ場が無い。

後半の畳みかけも凄まじい。

回想の使い方は正に橋本忍、流石の職人芸。

 

キャラクターの作り込みも素晴らしい。

役者の力も相まって、憎らしい奴が本当に憎らしい。

人物の追い込み方が半端じゃない。

人生の理不尽や人間の悪意を完璧に抽出して描き出す。

見ているのが辛い…。

 

空虚な建前や集団心理で動く人たちに、自分たちの醜い所が映し出されているかのよう。

人間という生き物を鋭く見抜き、容赦なく暴き出す。

 

 

驚愕の殺陣

この作品、殺陣のシーンは真剣を使っているそうな。

下手したら死人が出るような現場。

その甲斐あってか、緊迫感と恐ろしさが画面に溢れている。

 

 

 

まとめ

名優たちの演技合戦。

張り詰めた緊張感。

引き込まれる物語。

本当に目と耳が離せない。

 

底に流れるのは日本社会の本質を抉り出す様な問題提起でもあり、

今の世だからこそ見る必要がある作品かもしれない。

 

俺的この死に方は嫌だ大賞受賞作。 

 

 

 こちらで当時の話が書かれています。

仲代達矢が語る日本映画黄金時代 完全版 (文春文庫)

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